私とマイクロロン 由良拓也の場合

ライフルの銃身保護剤から生まれたマイクロロン

由良拓也:レーシングカーデザイナー

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そもそもマイクロロンがライフルの銃身保護剤として開発されたと聞かされたとき、どうでした?
由良

ものすごく興味が湧きましたね。どうして?って。銃身とそこから発射される弾丸の速度を考えてくださいよ。当然、ピストルでも亜音速、約340m/sec.でしょう。ライフルだと音速の2倍位 700~800m/sec.はあるわけですよ。この速度でこすれあう金属面の保護とフリクションロスの低減を実現するというマイクロロンに僕がグッと惹かれなければおかしいでしょう。

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実際、発明者のビル・ウイリアムスの使用していた超小型ライフル弾は音速の6倍だったそうですよ。このため連続で100発も撃つと銃身が焼け付いていたのを、マイクロロン処理で36000発の弾丸の発射に耐え、しかも銃身に磨耗や損傷が発見できないと。
由良

それって、すごいことですよ。なかなかそこまで効果的にはいかないものなんだけれどね。

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当然ここへたどり着くには何百回の失敗があったらしいですよ。開発ナンバーWZ-127の意味は?と聞いたら「もちろん、127は基本開発コードで枝番号は 無数」と言ってました。今でも銃用のマイクロロンは人気があります。銃身保護と初速アップに効果的と評価されています。
由良

ビル・ウイリアムスのすごいところは、銃身保護剤からエンジンに飛躍できるところだよね。弾丸と銃身の内壁がエンジン内部のピストンとシリ ンダー壁の関係になるってさ、気が付きそうで気が付かないよこれは。

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マイクロロンは由良さんとお付き合いをはじめて何年になるでしょうか?大変長い間おつきあいさせていただいてありがたいことなのですが、本当のところどうなのよ?という少し立ち入ったご意見をお聞かせ願えたら。
由良

長いですよね―、自分のくるまではコブラのレプリカに入れたときが印象的。あの気難しいエンジンがかなりお上品になってごきげん!レースではアコードがいまだに話題になりますよね。結果が良かっただけでなく、ミッションの処理効果が劇的でしたからね。今乗っているメルセデスMクラスはマイクロロン処理後の 燃費が「ウッソー」というぐらい向上、10%以上なので僕もびっくり。もちろん、僕がマイクロロンを信用しているのは自分の車やレーシングチームで使用した結果がいいからなんだけど、本当はそれだけではないと言いたいんですよ。

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ということは?
由良

マイクロロンはレースで使用した歴史も長いけど、自分の車でも良く使用しているから、ウンウン、今回は特に良く効いているなとか、それほどでもないかとか、よそのドライバーがかわいそう。それほどの効果!といろいろ車や状況で違ってきますよね。ここが言って見れば内燃機関のフリクションのむずかしくも微妙なところと僕は考えています。

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フリクションはまだまだ大きな問題? ばらつきがあるということですか?
由良

そう、ばらつきと言う問題もある。また、内燃機関のフリクションはまだまだ改善の余地がおおきいということ。僕達のようなレース屋も真剣に考えていますけど、メーカーもフリクションにはいまだに真剣に取り組んでいますよ。つい最近も、ピストンスカートに固体潤滑層を形成することで4%もフリクションを低減したと話題になったでしょう。まだまだ未解決の部分や未知の部分が存在するということでしょ。このことが意外と知られていないよね。オイルが入っているから解決しているみたいなムードってない?腹立つよね。

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はい、知った振りする方がかなりいらっしゃいます。
由良

ライフルの弾丸のスピードと較べると、エンジンのピストンスピードは何十分の一。負荷も違うし繰り返しも違う。だからすぐに結びつけるわけにゆかないけれど、少なくとも大変な好奇心を刺激するエピソードですよこれは。

由良

ところでレーシングカーの場合、フリクションに拘るというと三つの対応がある。ということを知っている?要はさ、フリクションを利用する、折り合う、減少するの三つ。フリクションを利用するはブレーキ、タイヤでしょう。フリクションと折り合うのがエアロ、車体設計かな。強ければ良いというものではないでしょう。そしてフリクションの減少はエンジン、ミッション、デフなんかだよね。どれも大事な要素だけど、それぞれの拘り方が言ってみればそのレーシングチームのノウハウになるよね。結論をいうと、フリクションは決して馬鹿にできません。そしてむずかしい。私も、かなりの部分をマイクロロンにおまかせしています。 かなりなものですよマイクロロンは。

※Friction

フリクションとは、摩擦抵抗のこと。
各種オイルで保護されてはいますが、エンジン始動中、車の内部では様々なパーツがこすれあって摩擦を起こしています。
フリクションが大きいとパーツがスムーズに動かずに、動きが重くなり、本来の性能を発揮できず燃料を無駄遣いします。
エンジンの摩擦抵抗の半分以上がピストンとシリンダー壁の間で発生し、ピストンの往復運動は必然的に潤滑の極限状態をもたらします。
最近のエンジンは、プラトーホーニング(*)という機械的加工技術によりシリンダーにミクロンレベルで、ピストンが摺動する面は平滑で、しかも深い谷が残ってオイル溜まりの役割も果たすという加工が採用されています。
(* マイクロロンの最適処理時期は慣らし運転が終わった頃---自らプラトーホーニングしたような状態になった頃---とおすすめしているのはこのためです。)
こうしても潤滑の極限状態の発生は防止できません。また、エンジン内部はピストンとシリンダー壁以外にも潤滑の極限状態が発生しやすい箇所が多数あります。
マイクロロンは、エンジン内部の摩擦発生箇所の全てを樹脂コーティングし、オイルがカバーできなくなる境界領域の潤滑で大きな効果を発揮します。
F1エンジンや最新のハイクラスエンジンのピストンには樹脂コーティングが施されていますが、マイクロロンがエンジン内部の樹脂コーティングを提案したのは今から40年以上も前のことです。
マイクロロンは「先駆にしていまもなお先進」 すなわち 「フロンティアにして今もなおトップランナー」なのです。

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